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Japanische Klassiker mit Furigana

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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

Lesen Sie 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.235 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

一

男――このカリカチュアで、戸田樹一の風を想像して下さい。

「私の申上げようというお話は、まことに心無きわざながら、世にも贅沢な美食家の、凄まじくも不思議な生涯なのであります。経済のまずしい今の日本で、美食や贅沢食いの話などは、甚だ怪しからんと仰しゃる方があるかも知れません。が、待って下さい、私は決して美食や贅沢食いを讃美し謳歌し崇拝するわけでは無いのです――反対にわたしは粗食の主張者で、耐乏生活礼讃者で、かくの如く道徳的で、そして御覧の通り健康であります」

話し手戸田樹一は、小さい身体の胸を反らせて、三十幾人の奇談クラブの会員達の、煙に巻かれた表情を見渡しながら、小さい眼をパチパチさせてから話し続けるのでした。

一

伯爵――その頃はまだこんな鬱陶しい肩書が存在して、それがまだ、人間そのものの値打でもあるかのように、法外に尊重されて居りましたが、――その伯爵海蔵寺三郎は、二十八歳で襲爵し、背負い切れないほどの夥しい財産と、物々しくも血腥い祖先の手柄によってかち獲た家名とを承けて、当座はこの上もなく神妙に、そして健康に暮して居りました。

その頃の青年華族などは、適当にケチで、お品がよくて、個性が無くて、積極的な行動を慎しんで、自分の意見をさえ言わなければ、それで先ず同族間の評判は申分無かったのです。