Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ようねんじだい

幼年時代・晩夏

堀 辰雄

Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme

Aozora Bunko

それだのに、人々は何かが其処にまだ見えでもするかのように、その惨事の痕をじっと見入っていた。

私は再びペダルを踏みながら、やっとその長い橋を渡りきり、そしてそのままY村にはいって行った。遠くからその全体を見渡したときは、なんだか此処もこの数年間にすっかり変ってしまっているように思えた。それほど見知らない大きな工場が、沢山出来てしまっているのだ。が、その村を二等分している真っ黒な掘割に沿うてすこし行き出すや否や、ことにその上に架っている多くの小さな木の橋と橋との間に、いまを盛りにコスモスが咲きみだれ、そしてその側に誰もいないのに四つ手網だけがかかっているのを見出した時には、突然、その村でのさまざまな思い出が私のうちに一どきに蘇って来て、私は心臓がしめつけられるような気がした。そうして私は自転車ごと殆んど倒れそうになった。私にはとてもこれ以上先きへ進むことは出来そうもないように思えた。……そのとき、その道ばたの一軒の茅葺小屋の中から、襤褸をきた小さな子供が走り出してきて、その四つ手網を重そうに一人で持ち上げだした。その網の中には、きらきらと光りながら跳ねているのでそれと分るような、小さな魚が二三匹ひっかかっていた……