Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
父と子
が、私はそれが自分の力ではなかなか持ち上がらないことを知ると、こんどはその人形をただ自分の手で撫でてやっているだけで満足した。しばらくそうやって撫でてかわいがってやっていると、その異様に冷たかったものが、ほんの少しずつ温かみを帯びてくる。そのほのかな温かみが――私自身の生の温かみのようなものが――子供の私にもなぜとも知れずに愉しかった。……
父と子
客などがあってにぎやかに食事をしている間などに、私はもう眠くなりかけて、母の胸がそろそろ恋しくなり出しているところへ「お父ちゃんとお母ちゃんとどっちが好き?」などと皆の前で父に訊かれる位、子供心にも当惑することはなかった。そんなときに父は大抵酒気を帯びていた。そしてふだんとは異って、しつっこく、私がいかにもてれ臭いような顔をするのを面白がって、いつまでも問いつめているようなことがあった。私は最初のうちは何んとかかとか云い逃れをしているが、そのうちに返事に窮してくると、もう溜まらなくなったように母の腕の中にとびこんで、その胸に私の顔を隠した。
「それはお母ちゃんの方が好きね?」とその母にまでそう揶揄うようにいわれると、私は急に怒ったようにはげしく首を横にふるのだった。