Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
洪水
さっきから二人を脅かしつづけていたもの、やっとのことで二人がその兇手から逃れ出してきたものが、いまや、もう二人が追いつきようのないほど遠ざかってしまったものだから、やむを得ずにとうとうその正体を現し、そんな凄じい異形をそこでし出してでもいるかのように、二人には見えるのであった。……
洪水
そういう夏が終って、雨の多い季節になった。
毎日が雨のなかにはじまり、雨のなかに終っていた。そういう雨の日を、たかちゃんも遊びに来ず、私はよく一人で硝子戸に顔をくっつけて、つまらなそうに雲のたたずまいを眺めていた。それを眺めているうちに、いつか自分の呼吸で白く曇り出している硝子に、字とも絵ともつかないような、それでいて充分に描き手を楽しませる模様を描いては、それを拭わずにそのままにして、又ほかの硝子戸にいって雨を眺めていた。
そんな硝子の模様は、あたかも私自身のいる温かい室内の幸福を証明しているかのように、いつまでも残り、それに反して、それ等を透かして見えている雨にびしょ濡れになった無花果の木をば、一層つめたく、気持わるそうに私に思わせていた。その無花果の木は、漸っと大きく実らせた果を、私達に与える前に、すでに腐らせ出していた。