Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ようねんじだい

幼年時代・晩夏

堀 辰雄

Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme

Aozora Bunko

四囲には錆びたトタン塀をめぐらしているきりで、一本も茂った樹木なんぞがなくて、いかにもあらわなような感じで、沢山の墓石がそこには、それぞれに半ば朽ちはてた卒塔婆を背負いながら、ぎっしりと入りまじっているばかり。――そしてそれらの高低さまざまな墓石のむらがりの上には、四月末の正午ちかい空がひろがって、近所の製造場の物音が何やら遠くなったり近くなったりしながら絶え絶えに聞えてくるのである。

私はこんな場末の汚い墓地に眠っている母を何かいかにも自分の母らしいようになつかしく思いながら、その一方、また、自分のそばに立ってはじめてこれからその母と対面しようとして心もち声も顔もはればれとしているような妻をふいとこんな陰鬱な周囲の光景には少し調和しないように感じ、そしてそれもまたいいと思った。いわば、私は一つの心のなかに、過去から落ちてくる一種の翳りと、同時に自分の行く末から差し込んでくる仄あかりとの、そこに入りまじった光と影との工合を、何となしに夢うつつに見出していた。

寺男が苔を掃って香華を供えたのち、ついでに隣りの小さな墓の苔も一しょに掃っているのを見て、私はもう一度それに注目した。