Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
いとこたちも来た。それからまだ麻布のおばさん――私が跡目をついでいる堀家のほうのたった一人の身うち――までも来てくれた。
私はまだ自分が結婚したことをそういう人たちには誰れにも知らせていなかった。それで、はじめのうちは来る人ごとに妻をひきあわせていたけれど、
「そうだ、父は死ぬかも知れないのだ」と思うと、すこしでも父のそばにいた方がいいような気がした。
それからは私は妻のほうのことは田端のおばさんに一任して、自分はなるたけ父の枕もとにいるようにしていた。云ってみれば、父がそうやっている私のことをなんにも知らずにいる、――それが私にそういうことを少しも羞かまずにさせていてくれた。
向うの間で、いま妻はどうしているだろうかと私はときおり気にかけた。すると、その妻が知らないいろいろな人たちの間でまごまごしながら茶など運んでいるもの馴れない姿が目に見えるようで、私はそれに何か可憐なものを感じることが出来た。いきづまるような私の心もちが、それによって不意とわずかに緩和せられることもあった。
父は四日目ぐらいから漸く意識をとりかえしてきた。しかし、もうそのときは口は利けず、右半身が殆んど不随になっていた。