Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
十七八の頃になってからは、それまでひとりでに自分の耳にはいっていたいろんな事から推測して、自分の生れた頃、父が一時母と分かれて横浜かなんぞにいて他の女と同棲していたような小さなドラマがあって、そのとき隣りに住んでいた老夫婦がたいへん母に同情し、丁度自分たちのところに跡とりがなかったので私を生れるとすぐその跡とりにした、――その位の小さいドラマはそこにあったのにちがいないと段々考えるようになっていた。そんな事のあったあとで、父は再び東京に戻ってきて、向島のはずれの、無花果の木のある家に母と幼い私とをむかえたのではあるまいか。ともかくも、その小梅の父なる人は、幼い私のまえに、最初からいた人ではなくって、どうも途中からひょっくり、私のまえに立ち現れてきたような気のする人なのである。
しかし、その突然自分のまえに現れた小梅の父が、自分の本当の父でないかも知れないなんぞというようなことは、私はずっと大きくなって、ことによると自分の生い立ちには、何かの秘密が匿されていそうだ位のことは気のつきそうな年頃になっても、私はいっこう疑わなかった。そして先きに母だけが死んで、父と二人きりで暮らさなければならなくなってからも、私はそれをすこしも疑うことをしなかった。