Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
四
私は三つのとき、母の手にひかれたまま、あの土手の上で父とわかれてからは、ただの一度もその父には逢わなかったらしい。その父の死んだときにも、私にはもう新しい父が出来ていたので、その手前もあったのだろう、何んにも知らされなかった。継母のほうは、私が十二三になるまで存命していたようだが、その死んだのも私は知らないで過ごした。
その継母という人は、全然私には記憶がないが、病身で、いつも青い顔をした、陰気な婦人だったらしい。しかし、不しあわせといえば不しあわせな人だった。晩年は藤森とかいう自分の血すじの甥を近づけていたが、その甥は鉱山かなんかに手を出し、失敗して、それきり失踪してしまったそうである。
四
私は或る一枚の母の若いころの写真を覚えている。それも震災のとき焼いてしまったが、私は亡くなった母のことをいろいろ考えていると、ときどきそのごく若いころの母の写真を思い浮べることがある。まだどことなく娘々していて、ちっとも私の母らしくないものだが、それだけにかえって私の心をそそるものと見える。
いまから数年ほどまえに、或る雑誌から私の一番美しいと思った女性という題でもって何か書いてくれと乞われるままに、ふとその古い写真のことを思いついて、小さな随筆を一つ書いたことがある。