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Japanische Klassiker mit Furigana

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ようねんじだい

幼年時代・晩夏

堀 辰雄

Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme

Aozora Bunko

それがうまく当って、一時は店も繁昌した。私の母しげが長女として生れたのはその飯倉であった。

しかし、その母の生れた明治六年は、また、廃刀令の出た年である。米次郎は再び窮地に立った。丁度そのとき質屋の株を売ろうとするものがあったので、よほど米次郎の心はそちらのほうに動いたが、それには玉がどこまでも反対した。質屋という商売を嫌ったのである。そこで米次郎もやむを得ずに芝の烏森に移って、小さな骨董屋をはじめた。が、それも年々思わしくなくなる一方で、もう米次郎には挽回の策のほどこしようもなく、とうとう愛宕下の裏店に退いて、余生を佗びしく過ごす人になってしまった。

米次郎がその愛宕下の陋居で、脳卒中で亡くなったのは、明治二十八九年ごろだった。……

そのとき私の母は二十四五になっていた。死んだ米次郎と玉との間には、長女である私の母をはじめ、四人の女とまだ小さな二人の弟たちがいた。

それから私の生れるまでの、十年ちかい年月を、私の母はそれらの若い妹や小さな弟をかかえて、気の弱い、内気な人だったらしいおばあさんを扶けながら、どんなにけなげに働いたか、そしてどんなに人に知れぬような苦労をしたか、いま私にはその想像すらも出来ない。