Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
……
「九月になって間もない或る朝、丁度こちらの三枝さんの奥さんが此処のヴェランダに出て新聞を見ていますと、きたない風呂敷包を肩にぶらさげ、蝙蝠傘を手にした婆さんがきょときょとしながら庭先へはいって来るので、また物売りかと思って見ると、それはお向いのお婆さんでした。とうとう辛抱しきれずに爺やと別れて、自分だけはこれから横川の在まで自分の先夫の娘を頼って行くのだと言います。こちらの三枝さんの奥さんは、日向さんの奥さんとは昔馴染でしたので、婆さんは出しなにちょっといとま乞に立寄ったのでした。
「三枝さんはそれまでのいろいろの事情をよく御存じのお方でしたので、その婆さんのことも気の毒に思われて、『あなたはとうとう行っておしまいになるんですか。もうすこしじっとしていらっしゃればいいのに……』といたわるように言われました。
「そう言われると、婆さんはつい日頃の愚痴が出て、いまさらのように日向家の仕打ちから、自分から見れば爺さんは呆れ返るほどのお人好しだのに、この村では誰一人にもそれが分からず、こんな折にも相談相手になって貰えるもののない事から、その挙句この村中の誰れかれの悪口を言い出すものですから、しまいには三枝さんの奥さんも持て余してしまって、いくらかのものを包んでやって早く帰らせようとしました。