Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ようねんじだい

幼年時代・晩夏

堀 辰雄

Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme

Aozora Bunko

「なんでもその夏にはこんな出来事もありました。八月の半ばも過ぎてから、爺さんは自分の甥とかのいる田舎へ鮎を食べに行こうと、奥さんとお嬢さんをしきりに誘っていました。いまでは爺やの唯一の身よりのものらしいその甥に、自分の世話になっていた立派な奥さんたちを一目見せておきたかったのでしょう。そこで或日、奥さん、お嬢さん、それに女中まで伴って、四人で汽車に乗り、小さな軽便に乗り換え、それからまた乗合に揺られて、その千曲川上流の或小さな町まで行き着いてみると、あいにくな事には川が荒れていて、鮎が一向に釣れず、その日はさんざんな目に逢って夕方帰っておいでになりました。そうして帰りしなに皆さんで私どもへお立寄りになって行きましたが、お嬢さんはずけずけと爺やに不平を言いつづけてばかりいました。

『爺やったらあんな田舎へつれて行くんですもの。みんな私のことを毛唐だとおもって珍らしがって見んの。私は構わないけれど、ママがお気の毒で見ていられはしなかったわ。……』

「しかし爺やは何を言われても、苦笑いにまぎらせながら、鉈豆の煙管をくわえたまま、ぼんやりと休んでいました。

「八月末になると、そのお嬢さんだけ先きに女中を連れてお引き上げになって行きましたが、奥さんはまだお残りになっていました。