Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ようねんじだい

幼年時代・晩夏

堀 辰雄

Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme

Aozora Bunko

が、それと同じような人込みの中で、私は同じように母の背中におぶさっていた。私はしかしこんどは何かに脅かされてでもいるように泣きじゃくっていた。私達だけが、向うから流れてくる人波に抗らって、反対の方へ行こうとしていた。ときどき私達を脅かしているものの方へ押し戻されそうになりながら。そしてその夢の中のようなもどかしさが私を一層泣きじゃくらせているように見えた。――それは自家が火事になって、母が私を背負って、着のみ着のままで逃げてゆく途中であったのだ。……

その当時には、まだその土手下のあたりには茅葺屋根の家がところどころ残っていたが、或る日、花火がその屋根の一つに落ちて、それがもとで火事になったのである。――ずっと後になって、私はそんなことを誰に聞かされるともなく聞いて、それをいつか自分でもうろ覚えに覚えているような気もちになっていたと見える。しかし私はそれを誰にも確かめたわけではないから、ことによると、唯そんな気がしているだけかも知れないのだ。一体、私はそういう自分の幼時のことを人に訊いたりするのは何んだか面映ゆいような気がして、自分からは一遍も人に訊いたことはない。