Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
たかちゃんがその傍に走っていって、何かしきりに話し出した。
その菜っ葉服をきた人は、その立ち話の間に、私の方を一ぺんじろりと見たようだった。それからまた少女の云うのを聞いているようだったが、そのうち急にその少女の方へ真黒に光った顔をむけて、二言三言何か乱暴そうに答え、もう私の方なんぞ目もくれないで、少女をそこへ一人残したまま、さっさと又火の中へはいっていってしまった。
少女はその場にいつまでも立ちすくんだようになっていた。私は門のそばに不安そうに立ったまま、もうどうなったって好いような気もちにさえなって、まだ何か未練がましくしている彼女の方を、まるで怒ったような目つきで見ていた。とうとう彼女は首をうなだれて私の方に向ってきた。
私は彼女に何も訊かないで、そこにいつまでも彼女が泣き顔をしたまま居残っていそうに見えるのを、無理に引っぱり出すようにして、二人して工場の門から出た。そうして、来るときは殆ど駈けっこをするようにして突切って来た広い野を、こんどは二人並んでしょんぼりと歩き出した。ところどころにある水溜りがきらきらと西日に赫いていた。相手の顔がときどきその反射でちらちらと照らされたりするのを、私達はさも不思議そうに、しかし何んにも言いあわずに見かわした。