Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
上で夢中になって帳面に何やら円だの線だのばかりを描いている。……
※(アステリズム、1-12-94)
その日は、二三日うちに牛島神社のお祭りが始ろうとする日のことである。九月も半ばに近かった。
弘はさっきからおばさんの家の八畳の間で、しきりに勉強をやっている。相変らず帳面に円だの線だのを引張っているのである。その日はおばさんが、中洲の待合の女中をしているその姉のところに頼まれてあった縫物を持って出かけていったので、一人で留守番をさせられている。自分の家からは、職人たちの金物を彫っている metallique な音に雑じって、ときおり若い娘たちの笑い声が聞えてくる。今度のお祭りには、弘の父のきもいりで、町内に屋台をこしらえて、そこに娘たちの生花を並べようというので、さっきから白髯の師匠や代稽古格の弘の母などに見てもらいながら、娘たちは大騒ぎをして花を活けているのである。――弘はときどき足を投げ出して、仰向けに寝ころんでは、娘たちの笑い声にじっと耳をすます。そうしてその五六人の笑い声の中から或る一つの笑い声だけを聞き分けようとしている。