Japanische Klassiker mit Furigana
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ようねんじだい
幼年時代・晩夏
堀 辰雄
Lesen Sie 幼年時代・晩夏 (ようねんじだい) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.965 Zeichen · 169 Bildschirme
やっとそれがかすかに他から区別されて聞えることがある。するとその笑い声だけが急に一瞬間高くなって、他の声が見る見る低くなっていくような気がする。そうしてその笑いは、少年の目の前に、晴れやかに笑っている、一つの可愛らしい娘の顔の image を喚起させる。が、その笑いは再び他の笑いに消されがちになっていって、それと一緒にその可愛らしい image もだんだん暈けていく。少年はそれだけでも満足して、再び起き上って、茶ぶ台に向うのであった。……
すると路地のうちに小きざみな足音がして、格子ががらりと開いたので、もうおばさんが帰ってきたのかしらと思って、弘がふりむいてみると、おばさんではない。半分開いた格子戸に手をかけたまま、派手な銀杏がえしに結った若い娘が、大きな目をして、彼の方を見つめている。
「なあんだ、照ちゃんか。おばさんかと思ったら……」弘はちらっとそっちを見たきり、いそいで目を伏せながら、そうつぶやいた。
「母さんは?」
「中洲のおばさんのところへ行っているんだ。」
お照という娘は、そのままちょっと格子に手をかけて、どうしようかと言ったように突立っていたが、とうとう中へはいってきた。