Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
Lesen Sie 恐怖王 (きょうふおう) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.038 Zeichen · 133 Bildschirme
捜査課長のS氏は、先に立って薄暗い段々を降りながら、尋ねた。
「エエ、僕の兄に当る訳です」
黒瀬は真面目な声で答えた。
何だか変な具合であった。考えて見ると、これは六年ぶりの兄弟の対面に相違なかった。何という異様な対面であろう。兄の方は一匹の野獣として、動物の檻の中にとじこめられているのだ。
奥まった薄暗い部屋のドアが開かれると、その中に頑丈な鉄の檻があった。檻の中には動物園の熊の様に寝そべっている黒いものがあった。
「コラ、起きろ起きろ、お前に逢い度いという人があるんだ」
S氏は靴で檻の縁をコツコツ蹴りながら、怒鳴った。
野獣はビックリした様に、ヒョイと顔を上げてこちらを見た。ゴリラの目と黒瀬画家の目とが、カチッとぶッつかった。
「アッ、お前……」
ゴリラが何か叫びかけてハッと口をつぐんだ。非常に驚いている様子だ。
「僕だよ三吉。覚ているかね、黒瀬正一だよ」
画家は、ゴリラの目を見つめながら、圧えつける様に云って、檻の側へ近づいて行った。画家はゴリラに対して、一種催眠術的な力を持っている様に見えた。彼の前では、あばれもののゴリラが非常におとなしく、首を垂れてかしこまっていた。