Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

――いう者があるので、信長が足下を見ると、藤吉郎がもうそこへ来て、両手をつかえていた。

「……猿か」

信長は、ふき出した。

藤吉郎の顔を見た途端にである――。なにしろ彼も三日三晩寝ないので、生乾きの荒壁みたいな顔をしていたのである。眼は真っ赤だし、胸も袴も泥まみれだった。

つい笑ったが、信長はすまない気持がして、すぐ真面目になっていった。

「よく致した。――さぞ眠たかろう。存分に一日、眠るがよい」

「ありがとう存じます」

藤吉郎は名誉に感じた。

この、国家一日も安息はできない時代に、

(存分に一日眠れ)

と、信長から労られたことは、最大なお賞めであると欣しく思われたので、寝不足の瞼に、思わず涙が沁みたのであった。

が、彼は、そんな満足を感じながらも、少しもじもじして、

「ええ……その……少々お願いがござりまするが」

と、云い難そうに頬を撫でた。

「何じゃ?」

「――御褒美です」

藤吉郎はいった。

はっきりした言葉なので、近侍たちは驚いた。信長の折角な機嫌が変りはしまいか――と、藤吉郎のためにむしろ惜しんでいた。

「何が欲しい?」

「かねが戴きとうございます」

「たくさんか」