Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

鉄漿将軍

愛宕、清水をすぐ下に望む大廂の彼方に、夕富士の暮れる頃になると、百間廊下の龕には見わたす限りの燈が連なり、御所の上かと紛う風俗の美女たちが、琴を抱いて通り、銚子をささげて通ってゆく。

「誰じゃ、庭面で――」

義元は、微酔の面に、銀杏扇をかざして云った。

虹のような朱の欄を架けた中庭の反橋を越えて来たのである。扈従の家臣や小姓たちさえ、眩ゆいばかりな衣裳や腰の物を着けていた。

「見て参りましょう」

小姓のひとりが、橋廊下をもどってすぐ庭へ駈け下りた。――誰か、夕闇の広庭で、悲鳴をあげた者があったのだ。義元の耳には女の声と聞えたので、不審に思って足を止めたのである。

「どうしたのやら小姓めは……音沙汰もない。伊予、そちも見て来い」

「は」

河合伊予も、庭へ下りて彼方へ見に走った。庭といっても、夕富士の裾野へ続いているかのように広かった。

橋廊下と廻廊の角の柱にもたれかかって、義元は、扇で手拍子をとりながら京謡を低声に口誦んでいた。女かと疑われるほど、色白に見えるのは、薄化粧をしているからであろう。脂肪に富んだ皮膚は生地から色白な質だった。ことし四十一の男ざかりではあり、世の中のおもしろい、そして得意の絶頂にある義元だった。