Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
田楽狭間は、はや間近ぞ。この沢こえて、彼方の山陰の向うの尾根ぞ。死に支度はよいか。駈けおくれて、末代末孫に、恥を遺物にのこすなよ」
信長の声のする所を軍の主流として、二千の手兵は当然、後れるもあり、散開して進むのもあって、隊形をなしてはいない。しかし、心は、また耳は、絶えず信長の声のするところへ集まっていた。
その信長の叱咤も、今は声も皺嗄れてしまって、何を叫んでいるのか、意味も聞き取れなくなっていた。けれど言葉の意味などは、もう将士に不要になっていた。ただ味方の上に、信長あり! と、分っているだけでよかった。
そのうちに。
槍の穂光りのような大粒な雨が横撲りに打って来た。頬や鼻にぶつかると痛いのである。木の葉を捲いた疾風が伴っているので、何が顔にあたっているのか分らなかった。また突然、山を裂くような雷鳴だった。一瞬、天地は一色になり、豪雨に白く煙った。雨が去ると、沢の底地や崖には、滝津瀬とばかり流れる水と、濁流に浸っている足もととを見出した。
「あッ、あれだッ」
藤吉郎は、呶鳴った。
顔を雨に打たせて、鯉のように睫毛の雫をしばだたいている部下の足軽たちを顧みて指さした。