Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
その義元の声らしく、
「儂にかまうなッ。急場ぞ、急場ぞッ。義元の身辺に、人数は要らぬ!」
烈しい声で、辺りに躁ぐ幕僚や旗本たちを罵っていた。
「――狼狽えずと、敵を退け、みずから首を授けに来たりしこそ幸いなれ、信長めを、討って取れッ。義元の身を護るよりは敵へ当れッ」
さすがに彼も三軍の総帥であった。誰よりもはやく、形勢の全体を察知した。いたずらに右往左往したり、身近に従きまとって、無意味な呶号ばかりしている将士らを腑がいなしと怒っているのだった。
それに鞭打たれて、
「あッ――」
と、彼の身辺を離れた将士は、日頃の鍛錬と恥とを思い起して、各※(二の字点、1-2-22)、戦いの中へ身を投じて行った。
ばッばッと泥水を刎ね上げて行く幾名かのその足元をやりすごしてから、物蔭に潜んでいた桑原甚内は、確かに、大将義元と見たそこを窺って、槍の先で、濡れた陣幕のすそを払い上げた。
「……やッ?」
義元の姿はもうなかった。
一人の武者もいないのだ。
幕のうちには、大きな木鉢の飯が覆って、雨水の中に飯つぶが白くふやけているのと、四、五本の燃えさしの薪がいぶっているだけだった。