Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme
親たちと、膳をかこんで、御飯でもたべている折かな?」
三度ぐらい、そこの垣の外を、彼はさあらぬ顔して、行きつ戻りつした。宵なので、誰か一人や二人は往来があるのだった。垣根にすがって覗きこんでいるところを、
「木下殿」
などと知っている者に呼びかけられたら大いに赤面ものである。いやそれよりも、折角、犬千代が手をひき、親の又右衛門も、その後、考え直して来て、寧子と自分との結婚の工作が、このところ好転しかけているものを、自分でぶち壊すような結果を招来する惧れもある。
今は。
そッとしておくに限るのだ。寧子の母も、寧子も、心はきまっていよう。だが、父親の又右衛門がまだ、容易に、肚を決めかねているところだ。七分三分の考慮中で、娘と父、母親と父親とのあいだにも、なかなか易々とは一致をみないままに、ここはお互いが、心の推移を待っているといった按配に――一先ず寧子の縁談は、家庭のうちでは、打ち切られたすがたになっているのであろう。
そこへ。
この前のような短兵急に、厚顔しい押しの一手で、
「寧子を給われ。婚礼の日どりを決めて欲しい」
などと自分でもちかけると、かえって又右衛門の厳格な父性は反撥するかも知れないし、寧子や寧子の母親が、せっかく寄せている好意をも、興さまして、ふと、考え直されでもしたら、取り返しはつかない。