Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

だが、ふと、

(娘を、他家へやったら、もうこの茶ものめぬ……)

冬来れば冬枯れる、庭面の移りなど想いながら、ふとそんなことも考えたりしていた。

「ごめん遊ばせ。……」

小襖の外。

「こひか」

妻の顔を見ると、又右衛門は、寧子へ、茶わんを戻して、

「母へも、一ぷく、たてて与えよ」

「いえ。お後で」

見ると、こひは、状筥を持っていた。今、玄関に使いが見えておりますというのである。状筥を膝へ取って、蓋を払うと、

「はてな」

又右衛門は、いぶかしい顔した。

「――殿のお従兄弟様。名古屋因幡守様からのこれは御書面。何事やらん」

にわかに立って、口を漱ぎ、手を浄めて来て、状を拝し直した。主君の御一族とあれば、手紙といえども、その人の前にあるのと同じ礼儀を執るのであった。

その状を読み終ると、又右衛門は妻の顔を見て、

「お使いは、お待ちになっておられるのか」

「はい。けれど御返辞は、御口上でもおよろしいとのこと」

「いやいや、失礼にあたる。ちょっと、硯を」

「はい」

料紙へ、一筆して、又右衛門はすぐ、使いへ戻した。

妻のこひは、手紙の内容が気にかかった。主君の信長の従兄弟にあたる名古屋因幡守から、この末臣の家へ、直々に状を持たせて使いをよこすなどは極めて稀れなことである。