Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

にこと笑う。寧子やこひも、にこと笑う。すたすたと彼はもう大股に背を見せて歩いてゆく。弓之衆の同僚の庭や窓から、やあと声をかける人がいる。やあと挨拶して通る。

相かわらず何処のやしきも貧乏と質素な景色である。しかし、織田の御家中はみなかくの如く息災だと、又右衛門はひとり祝福して眺めてゆく。貧乏と質素につきものの子沢山は、弓之衆の組長屋にも沢山いて、屋敷屋敷の垣ごしには、襁褓の干してあるのがひどく眼につく。又右衛門自身が実子を持たぬせいもあろう。ひとりの姪を娘として育てて来たのが、ようやく妙齢となったので、

「やがて、自分の家にも、あのような孫の襁褓が」

と、自然考えられて来る。――それは又右衛門にとって、余り感心したことでなかった。やがて孫から、おじいちゃまなどと呼ばれる日を想像するのは、楽しくなかった。まだそうなるには心外なような自分を足腰に残しているつもりなのだ。つい先頃の田楽狭間でも、人におくれはとらぬつもりで働いたが、

「この先とても」

と、戦場の馳駆を、また、武功帳の筆頭にもなろうことを、決してあきらめてはいないのであった。

「……お、いつのまにやら」