Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 190.406 Zeichen · 381 Bildschirme

Aozora Bunko

「どうしておぬしはそのようなことまで存じておるのか」

「美濃には長くいたことがござるゆえ――」

藤吉郎はただそういうだけに止めていた。針売りの行商をして彷徨い歩いていたことや、蜂須賀村の小六たちの徒党に飼われて、稲葉山の隙を窺っていたりしていた少年の日のことなどは、おくびにも口に出さなかった。

「オ。思わず余談を」

犬千代は、鞍上にもどって、

「では、馬揃いで」

「おう、後刻」

ふたりは、そこの町辻を、裏と表へ駈けわかれた。どっちも若い青雲の夢を抱いて。

「今、戻ったッ」

玄関声とでもいうのか、いつ帰っても上がりしなに先ず大声をとどろかせる。そら聟様のお帰りと、納屋働きの下男から勝手の隅にまで分るのであった。

藤吉郎は今日に限って出迎えも待たず、もう奥へ通ったが、出会いがしらに寧子が姿を現わしたので、

「おやッ?」

びっくりした顔をした。

「お帰りあそばしませ」

寧子はいつもと変りなく、すぐ彼の棒立ちになった足もとへ手をつかえる。

さすがに藤吉郎も、すこし胆を挫がれた。どうして自分より先に寧子が家に帰っていたろうか。後に残って乙若の家内を励ましたり、子供らへ志の物を与えて後刻に帰れ、といいつけて自分が一足先に出たのに?