Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.903 Zeichen · 400 Bildschirme
老坂
つかまれている襟元の手を振りほどいて、光春はいきなり光秀の体を畳へ突きとばした。
「わ、わたくしは、……わたくしは、哭きたい。……殿、哭かせて下さい」
「何を悲しむ。ばかめ」
「ああ。……ばか!」
「ばかっ」
「ば、ばかっ」
「ばかだっ。そちは」
「ばかだ! あなたは」
ふたりは罵りあいながら、しかも互いに男の力でひしと相擁して哭いていた。そのまま慟哭していた。
武者隠しの内でも、となりの襖の蔭でも、ひとしく啜り哭く声が揺れていた。
老坂
気象も夏、気温も夏、夏はすっかり本格になった。
わけて六月朔日は近年にない暑さだった。朝から雲一つなく照りつづけ、午過ぎてからは北の空の一方は雲の峰に蔽われたが、なお暮れるまで夕陽の熱と光は丹波の山河を焦いていた。
亀山の町はこの日を期して、がらんとしてしまった。あれほどいた兵馬輜重が、いちどに城下外へ出て行ったためである。
その鑓鉄砲の列や、銃丸火薬そのほかの軍用品を積んだ輸送部隊が、汗の顔に焦けつくような黒鉄のかぶとをいただき、旗さし物を負い、武者わらんじを踏みしめて、きょう本国の地を立つと見るや、町の者、郷土の老幼たちは、沿道に群れ立って、