Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 176.911 Zeichen · 353 Bildschirme
と、すぐ崖下に、咬みあう猛獣のようなうめきと木の揺れが聞えた。まだ、味方の黒母衣か誰かが残っていて、死闘をふるっているものとみえる。
勝入の面は、無感覚にみえる。すでに、勝敗もない。功利もない。現世との淡い離愁が、母の乳の香のする遠い過去までを、ふと、思いかえさしているだけだった。
がさッと、眼のまえの、灌木がゆれた。
「だれだッ」
と、勝入の眼が、くわっと射て――。
「それへ参ったは、敵ではないか」
と、よびかけた。
余りに、落着き払った声と、そこの姿に、近づきかけた徳川方の一武者は、思わず、ギクとして後ずさった。
勝入は、なお叫んで、
「――敵ではないか。敵ならば、わが首を取って、功名にするがいい。かくいう者は、池田勝入であるぞ」
と、催促した。
灌木の茂みの中に身を伏せた武者は勝入の姿をふり仰いで、身ぶるいした。そして、昂ぶりきった声と共に身を起して、
「おうッ、よいお人と出会い申したり。徳川家の永井伝八郎ッ。見参ッ」
と、槍をつけた。
当然、それと共に、音に聞く猛将の陣刀が、さつ然と、反撥を見せるものとばかり思っていたところ、伝八郎の槍は、そのまま、何の苦もなく、相手のわき腹へ深く通ったので、