Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme

Aozora Bunko

「なんのために、濠があるんだ。小六様にひとつ云って上げよう」

竹竿を突っ込んで、水深をさぐって見た。水草でいちめんなので誰も気づかないが、日吉が察した通り、底は何年となく、落葉や泥の堆積に埋まって、何尺もなかった。

二、三ヵ所でそうして、竹竿を抛り捨てて、横門の橋へかかろうとすると、

「御小人」

呼ぶ者がある。

日吉の身なりが小さいから御小人といったわけではない。大家に仕える小者のことをそういうのである。

「誰だい?」

橋の上から、日吉は振り向いた。

見ると、濠のそばの、椎の木の下に、薦を敷き、鼠色の着物を着て、尺八を差した男が、ひもじいような顔して、膝を抱えていた。

「ちょっと……」

と、男は手招きした。

この村へも、時々、はいってくる虚無僧である。薦僧とも呼んでいる。

ずっと後の、江戸時代のそれのように、その頃の薦僧には一定した宗服もなかったし、掛絡や袈裟なども、あんな美々しい粧いはしていなかった。どれもこれも、薄ぎたなくて、不精髯を生やして、負い薦に尺八一本持って歩いていた。――中には本格的に鈴を振って、普化禅師をまねて凛々と遊行していた者がないこともなかったが。