Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
蛍
て、まったく放心の姿で寝ている。
「……おいッ」
兵は、呼び起してみたが、覚めようともしないので、槍の石突で、その男の胸のあたりを、
「おいッ!」
と、もう一度、呼び起しながら、軽く小突いた。
眼をあいた男は、槍の柄をにぎって、くわッと、兵の顔を睨めかえしながら、
「なんだッ?」
と、寝たままで云った。
蛍
流れる水のすがたにも似ている今の境遇を、矢矧川の柳の蔭に寄せて、腐れ苫を被いで一夜を舟に過していたその男は、中村の家を出たきり、便りも知れなかった日吉であった。
去年の一月、霜の夜――
母に、一袋の塩をのこし、自分は父が遺産の銭一貫文をもらって、
(偉くなって帰る)
と、姉にも、母へも、そう誓って家を出た彼だった。
もう今までのように、商家や工匠の徒弟になって、転々とする気もちはない。
(侍奉公を!)
と、一途に求めた。
けれど、氏素姓も定かでない――また、見るからに風采の貧しい彼を、侍屋敷では、どこでも抱えてくれなかった。
清洲。那古屋。駿府。小田原――と歩く先ざきで、
(紺屋の手伝いなら)
とか、
(馬飼の厩掃除なら、世話してやるが)
などと、いわれるだけで、たまたま、勇をふるい起して、侍屋敷の門前に立ち、