Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
或る年は、今川家の精鋭が、この辺まで潜行して来て、ふいに民家に火を放けたり、田の稲を刈ったり、畑を荒したりして去ったこともある。
そういう時、領主の兵は、火の手を見るや、那古屋や清洲城から殺到して、眼の前で、敵を蹴ちらし、敵を斬り、そして各所の砦や木戸の兵も出合わせて、これを殲滅した。
冬――
そんな年には当然、土民は、食物にも家にも困ったが、誰も、領主を怨まなかった。飢えれば飢えるで、寒ければ寒いで、
(今に、一泡ふかしてやるで)
と、むしろ今川氏に対する敵愾心を昂めた。
この辺の童は、生れた時から、それを見、それを聞きして、育って来たのである。
だから領主の軍勢とみれば、自分自身みたいに思った。また、子供らの生れながらの血も、兵馬を見ると、何を見たよりも強く昂奮した。
「行ってみろ」
誰かがいうと、わっと皆、それへ向って今も、駈け出した。
於福と日吉だけは、後に残ってまだ睨みあっていた。気の弱い於福は、他の者と一緒に駈けて行きたかったが、日吉の眼に縛られて、去るに去れない姿だった。
「……ごめん」
於福は、恐々、日吉のそばへ寄って、彼の肩へ手をのせた。