Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme

Aozora Bunko

「おいおい、門番。そいつはいいのだ。分っておるのだ」

「へ、よろしいので」

「猿、こっちへ来い」

能八が、猿と呼ぶと、門番たちはそのことばに笑って、

「なんだあいつあ。白い腰切を着て、泥苞を提げて、妙見様のお使いみたいじゃないか」

能八に連れられて行きながら、日吉は背中に、門番たちのどッという声を聞いた。しかし、彼はもう、生れてから十八年、あらゆる人中の嘲罵に馴れている。

感じないのか。麻痺したのか。

そうでもないらしい。

なぜなら、そういう嘲罵を背に聞く時は、やはり誰もと同じように、彼の赤ら顔が、なおいくぶんか充血する。殊に、耳は一層赤くなる。――裡に感情がうごいている証拠である。

だが、感情のうごきによって、彼の動作は変らない。馬の耳の如く平然たるところがある。むしろ少し愛嬌をふくむ。――みずからこういう逆境に歪められまい、自己を卑屈に育てまいと――心の茎に添竹の支えをもって、静かに嵐の過ぎるのを待っている草花のようにである。

「猿」

「はい」

「あそこに、空いているお厩がある。目触りにならぬように、その辺で控えておれ」

能八にも、用があるとみえ、云いすてて行ってしまった。