Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
この一軒
「戦がやんだら、そのうち遊びに寄るぞというてくれ。弥右衛門どのへも」
云い捨てると、列から後れた弾正は、駒を速らせて、川瀬へ入れた。駒の脚から白い水が颯々と立って行く――。日吉は、甘黍の糟を口に入れたまま、恍惚と見送っていた。
この一軒
彼の母は納屋へはいるたびに、心が暗くなった。
漬物や穀類や焚物や――ここへはいる時は必らずそういう蓄えを取り出しに来るのであるが、その生命の糧は、常に途切れがちだった。
(この先、どうして……)
と、胸がつまるのである。
子どもは、七歳の日吉と、十歳になる姉と、わずか二人に過ぎなかったが、どっちもまだ何の働きに出せる年でもないし――良人の弥右衛門は、夏でも炉ばたに坐ったきりで、湯沸の下を見ているだけのことしかできない不具者だった。
「――あんな物、いっそのこと薪にして焚いてしもうたら、胸が癒えように」
納屋の壁を仰ぐと、真っ黒な樫柄の槍と、陣笠と、切れ端のような古具足とが、吊してあった。
以前、良人が戦に出るごとに、身に着けて出た晴着である。
それも今は、煤だらけになったまま、不具の良人と同じように、納屋の隅に埋もれていた。