Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
ここへ来い。ちょっと、これへ来い」
壁の陰で、日吉は唾をのんだ。そして告げ口したおつみを睨みつけた。後からはいってきた母は、またしても――と呆れ顔に、土間口で立ち止まっていた。
父親は怖かった。世の中で怖いものの第一が父親だった。
日吉は、畏って、
「何ですか」
と、弥右衛門の顔を仰いだ。
木下弥右衛門は、炉を前に坐って、麻箱に肱をついていた。
うしろの壁には、起居につかう杖が立てかけてある。厠へ通うにも、その杖にすがらなければ歩けない彼であった。
常に坐っている彼の傍らにある麻箱は、そういう不具な体でも、いくらかの家計を助けるために、気が向くと、麻を紡いでは、それへ溜めておく内職道具の一つであった。
「日吉」
「はい」
「あまり母親に世話をやかすじゃないぞ」
「え」
「姉に向って、悪たいをつくのもよくない。男のくせに、女どもを相手に、何という体だ」
「何も……何もおらは」
「だまれ」
「…………」
「わしには耳がある。おまえが何処で何をやっているかぐらいのことは、坐っていても知っている」
日吉は、心のうちで顫いた。父のことばは、父のいう通りに思った。
だが弥右衛門は、この子が可愛くて堪らなかった。