Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme
そのくせ以前とちがって、筑阿弥は畑には滅多に出ず、家にもいない日が多かった。町へ行くらしいのである。そして酔って帰っては、子をどなり、妻に当って、
「いくら働いたって、この家の貧乏は直りッこねえわ。喰いつぶしは多いし、年貢は増すし。餓鬼さえなければ、おれも野武士の仲間にでもはいって、うまい酒も飲めるが、こう足手纒が多くっちゃあ……」
と、口ぎたなく云いちらした末、なけなしの金を妻に算段させて、夜夜中でも、おつみや日吉に酒を買いにやらせるのだった。
その義父のいない時、
「おっ母、おらあまた、奉公に行きたい」
と、日吉が母に洩すと、お奈加はそういう日吉を抱きしめて、
「……いておくれ、今おまえが家にいなかったら」
と、後の言葉は、云い得ない涙になって、ホロリと一雫、横を向いて眼を拭うだけだった。
母の眼の一しずく――
それを見ると、日吉はもう、何もいえなくなってしまい、家を飛び出そうかという考えも、不平も、辛さも、胸から捨ててしまった。
だが、そんな可憐しい気持が起るかと思うと、少年の天性のうちには、遊びたい、喰いたい、知識を得たい、遠くへ奔りたい――さまざまな欲望の芽が、雑草の伸びるように旺んになるのであった。