Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 180.256 Zeichen · 361 Bildschirme

Aozora Bunko

さけは酒屋に

よい茶は茶屋に

女郎は

清洲のすがぐちに

その須賀口には、妓楼や茶屋が軒をならべていて、昼間は、禿たちが鞠をつきながら、往来で唄っていた。

少年日吉は、荷を積んだ手車を押して、鞠唄の中を、うつつに通った。

ぼんやりと――

「どうしたら偉くなれる?」

まだ、その解決もつかめていないのに、ただ一念に、

「今にみろ、今に」

と、漠とした希望に、さまざまな妄想を描きながら行くのだった。

美味そうな食物、豊かそうな家、絢爛な武具、馬具、衣裳、宝玉などを売っている店――彼には縁のないあらゆる物資がこの町には軒なみに積んである。

中村の家にいる姉のおつみの青い痩せた顔を思い泛べると、饅頭屋の蒸籠から立つ湯気を見ても、

(姉やにも買ってやりたいなあ)

と思い、老舗の薬屋の前を通っては、

(おっ母に、あんな薬をいつもやれたら、もっと丈夫になるだろうに――)

と、そこの薬草嚢に見恍れたりした。ただ筑阿弥のことだけは、べつにどうとも、考え出されなかった。

(おらが偉くなれば)

と思う底には、世間の誰と見較べても、余りにみじめな、母とおつみとを、幸福にしてやりたいという気持も、多分にあった。