Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.076 Zeichen · 256 Bildschirme
彼女にはそうした満足と誇りがあり、そして家庭は、彼女の収入を煩らわさないでも、子供を教育していかれるだけの夫をもっている。それは女芸人とよばれる仲間ではめずらしいことなのだ。今年――大正七年に彼女は四十四歳になるが、この上の平和と幸福とは重なろうとも、彼女の身辺に冷たい風の逼ろうはずはない。私が彼女は幸福だといっても、錯まった事ではなかろうと思う。
彼女には上なき誇りがも一つある。それは童貞同士の恋人で、初恋の夫妻であるという、これも芸の人にはめずらしいことといわなければならない。三人の母の彼女の至上の宝は夫であり、彼女の夫の無上の満足は妻としての彼女を持つことだが、そのためには幾人かの犠牲者に、同情するひまも、一滴の涙もこぼしてやる余裕もなかった。俊敏な綾之助は、盛名を保つに聡かったであろうが、綾之助を情にもろくまけない女に教育したのは、七歳の年から無心で語っていた義太夫節が、知らず知らずの間に教えた強いものが、綾之助の心の底に生れつきのように根をはっていたのでもあろうと考える。
大阪南区畳屋町に錺屋の源兵衛という人があった。その人の父親は、石山新蔵という、大阪の江戸堀蔵屋敷詰の武家であったが、源兵衛は持って生れた気負い肌が、侍をやめて、維新の新政を幸いに気軽く職人になってしまったのだった。