Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
野獣のように土だらけな足をして谷間を馳歩いた私が、結構な畳の上では居睡も出ました位です。
何一つ御不足ということが旦那様と奥様の間には有ません。唯御似合なさらないのは御年です。ある日のこと、下座敷へ御客様が集りました。旦那様は細い活版刷の紙を披げて御覧なさる、皆さんが無遠慮な方ばかりです。「こりゃ甚い、まるで読めない」と旦那様はその紙を投出しました。
「成程、御若い方の読むんで、吾儕の相手になるものじゃありません。ここの処なざあ、細い線のようです」
と言いながら、一人の御客様は袂から銀縁の大きな眼鏡を取出しました。玉の塵を襦袢の袖口で拭いて、釣針のように尖った鼻の上に載せて見て、
「これなら私にも、明瞭とはいきませんけれど……どうかこうか見えます」
「へえ、一寸その眼鏡を拝借」と他の御客様が笑いながら受取て、「成程、むむ、これなら明瞭します」
旦那様も笑って反りかえりました。やがて、瞬をしたり、眼を摩って見たりして、眼鏡を借りようとはなさいません。
「まあ、眼鏡はもう二三年懸けない積です。懸けた方が目の為には好と言いますけれど」
「ですから、私なざア何か読む時だけ懸けるんです」