Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうぶんにほんばし

旧聞日本橋

長谷川 時雨

Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.045 Zeichen · 322 Bildschirme

Aozora Bunko

」

あたしは顔も洗わずに、湿った土の上へ一足、片折戸を開けて飛出すと、向うの大百姓の家のお嫁さんが生姜を堰でせっせと洗っていた。名物の谷中生姜は葉が青く生々していて、黒い土がおとされると、真白な根のきわにほの赤い皮が、風呂から出た奇麗な人の血色のように鮮かに目立った。ボンヤリ見ている私は手伝いたくてウズウズしている。小僧さんが天秤棒が撓むほど、籠に一ぱいの大きな瓜を担いで来て、土橋をギチギチ急いで渡ってた。

町の子のあたしが、笹舟を流すことを知ったのも、麦笛を吹いたのも、夜蒔きの瓜の講釈をきいたのも、田圃へどじょうを突きに行ったのも、根岸の里住居のたまものだった。おばあさんは切れの巾着の中味を勘定して、あたしのおやつや好きな塩鮭の一切れを買いにいった。まだ上野山下の青石横町にいる時分に、あたしは雨上りに三枚橋下へ小魚を掬いにいったり、山内へ椎の実を拾いにいって、夜になるとおばあさんの不思議な話をききながら煎ってもらって、椎の実の味を知った。秋のはじめになると、

「蓮の実はいらないか、蓮の実いらないか。」

と短く折った蓮の蕋を抱えて、売ってくれる子とも馴染になって、蓮の実の味も知った。