Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
赤く焼けた溶岩の、不気味なほど莫大なつみ重なりであった。もはや之は山というものではなかった。双眼鏡のレンズのせいか、岩肌の陰影がどぎつく浮き、非情の強さで私の眼を圧迫した。憑かれたように私はそれに見入っていた。
「ちょっと」
低い押しつけられたような声であった。私は思わず双眼鏡をはなして、その男の顔を見た。中腰の姿勢で、眼を据え、耳を立てている。
「飛行機です」
男は私から双眼鏡を受取ると、南の空に目を向けた。私には何も聞えない。ただ蝉の声が降るようにはげしかった。
空には雲がなかった。太陽はぎらぎら輝きながら、虚しい速度で回転していた。その大空の何処かを、鋭く風を切って、飛行機が近づいて来る気配があった。
男は、双眼鏡を眼から離すと、栗の木の電話機に飛びついた。呼鈴をならした。此のような山の中で聞く呼鈴の音は、妙に非現実的に響いた。
「グラマン一機、ええ、グラマン一機、鹿屋上空。針路、針路北北西――」
その時、突然のように、冴えた金属性の響きが、微かながら私の耳朶をとらえた。私が空を振り仰ごうとしたとき、男の手が私の肱をとらえた。
「待避、待避しなくてはいけません」