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Japanische Klassiker mit Furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lesen Sie 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.078 Zeichen · 285 Bildschirme

Aozora Bunko

と妻女は云った、「お茶を替えましょう、菓子をお摘まみなさいましな」

まもなく玄四郎はいとまを告げた。

――世間は平常に動いている。

外へ出ると、彼はそう思って嘆息した。外記の妻女は、彼がむかしの女にみれんをもっていると推察した。それは彼の暗示にかかったもので、彼の言葉をそのまま、いかにも女らしく解釈したためであるが、そういう誤解をするのは、彼女が平常な生活をしているためである。

――太田弥兵衛もそうだ。

むろん支配の松本外記もそうだ、と彼は思った。

かれらはみんな、平常で安穏な生活の中にいる。朝は健康な気分で眼をさまし、家人が腕をふるった食事をとり、出仕すれば一日の事務に精をだす、同僚とたのしく茶飲み話しをし、こころよく疲れて帰る。それから風呂にはいり、子供をあやし、美味い夕食を喰べて、知人のところへ碁将棋をしにゆくか、妻と二人でゆっくり酒にするかする。寝間は静かで温かく、眠りはさまたげられることもなく深い。家計が窮屈だとか、少しばかり出世がおくれているとか、同僚とのちょっとした不和、家族のあいだのつまらない感情のもつれ、などということのほかに、たいした不満や不平もないだろう。