Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
そのほかには何の物音もきこえない。
しまりのない口を半ばひらいたまま、ぽかんとして次郎のうしろ姿を見おくっていた馬田は、次郎が十間以上も遠ざかったころ、つぶやくように「畜生!」と叫んだ。そして帽子をふりあげて、力まかせに自分の股をもう一度なぐりつけた。
次郎の耳にもその音はきこえた。しかし、彼はふりむかなかった。そして、もうとうに見えなくなっている道江のあとを追うように、路をいそいだ。
道江の家は、馬田と同じく橋を渡った向こうの村にある。彼女が学校の帰りに、大巻や本田に用があって、橋を渡らないでまっすぐこちらの土手を行くことはしばしばだが、きょうの様子は決してただごとではない。彼女は、或いは毎日のように馬田に学校の帰りをおびやかされているのではあるまいか。次郎は、ついこないだ自分の家の階段の上で、道江と馬田が出っくわした時のことを思いうかべながら、そんなふうに考えた。
家に帰りつくと、すぐ彼は、道江が来てはいないかと思って、鶏舎の方まで行ってそれとなく彼女をさがした。しかし、来たような様子はなかった。で、彼はすぐその足で大巻をたずねた。
大巻の家は彼の家から一丁とはへだたっていない。