Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 178.724 Zeichen · 355 Bildschirme
「朝倉先生が待っておいでだ。」――昨日父にそう言われたことが、彼には一日気にかかっていた。しかし、なお一層気にかかっていたのは、血書を書いた自分のことを先生が「かわいそうに」と言われたということだった。最初この言葉を父の口をとおしてきいた時には、それがあまりにも予期しない言葉だったために、ただ面くらっただけだった。しかし、彼にとって、朝倉先生の言葉は、とりわけそれが彼自身のことに関して発せられた場合、どんな片言隻句でも、軽い意味をもつものではなかった。彼はそのあと二階にねころんで、ひとりでいろいろと考えてみた。言葉がありふれた簡単なものだっただけに、かえって意味がつかみにくかった。もしそれが世間普通の人の口をもれた言葉だったら、血を流した自分に対する同情の言葉とも解されようし、また県当局という大きな相手を向こうにまわしたことに対するあわれみの言葉とも解されよう。しかし朝倉先生がそんな甘いお座なりを言われようはずがない。先生の愛情はもっと深いのだ。先生の言葉の奥にはいつもきびしさがある。われわれの心をむち打って一歩前進せしめないではおかないきびしさがある。