Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
次郎は、むろん、それに気がついていた。かれは、しかし、あくまでも眼を先生と恭一とのほうにそそぎ、熱心に二人の話に聞き入っているかのように装った。
「ねえ、次郎さん――」
と、道江が、とうとう身をすりよせるようにして、小声でいった。
「お手紙、どうして一度もくださらなかったの?」
次郎はちらっと道江の顔を見たが、その眼はまたすぐ恭一のほうにそそがれていた。そして、かなり間をおいて、
「べつに用がなかったからさ。」
と、ほかの人にきこえるのをはばかるような、ひくい声でこたえ、頬を紅潮させた。
まもなく朝倉夫人が玄関口までもどつて来て、言った。
「おひるは本館のほうに用意しておきますわ。あと三十分ほどでしたくができますけれど、それまでに、お二人に館内をご覧いただいたら、どうかしら。恭一さんも、まだ本館のほうはよくご存じないんでしょう。次郎さん、すぐご案内してくださいよ。」
次郎はふすまを半分あけて夫人にこたえたが、むろん気はすすんでいなかった。かれは夫人の足音が消えると、恭一を見て、
「本館を見る? もうたいてい知っているだろう。」
「くわしくは知らないよ。いつも、塾生たちのじゃまをしてはいけないと思って、先生の室と、君の室よりほかには、はいったことがないんだ。