Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

二 ふたつの顔

という親鸞の言葉と、一脈相通ずるところがあるからなのかもしれない。さらに立ち入って考えてみるなら、自分の現在の生活を幸福と感じつつも、まだ心の底に燃えつづけている道江への恋情、恭一に対する嫉妬、馬田に対する敵意、曽根少佐や西山教頭を通して感じた権力に対する反抗心、等々が、「歎異抄」を一貫して流れている思想によって、煩悩熾盛・罪悪深重の自覚を呼びさます機縁となっているせいなのかもしれない。すべてそうしたことは、かれのこれからの生活の事実に即して判断するよりほかはないであろう。

で、私は、過去三年半のかれの生活の手みじかな記録につづいて、かれのこれからの生活を、もっとくわしく記録して行くことにしたいと思っている。

二 ふたつの顔

次郎は今朝から事務室にこもって、第十回の塾生名簿を謄写版で刷っていたが、やっとそれが刷りあがったので、ほっとしたように火鉢に手をかざした。しかし、火鉢の炭火はもうすっかり細っていた。謄写インキでよごれた指先が痛いほどつめたい。

塾堂の玄関は北向きで、事務室はその横になっているので、一日陽がささない。それに窓の近くに高い檜が十本あまりも立ちならんでいて青空の大部分をかくしている。