Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
」
それで浴室はまたにぎやかになり、笑い声がうずまいた。大河は、しかし、もうにこりともしなかった。
朝倉先生は、何かものを考えるときのくせで、その澄んだ眼をぱちぱちさせながら、湯ぶねを出て、からだをふいていたが、みんなの笑い声がしずまると、言った。
「大河君の考えている恋愛と、君らの考えている恋愛との間には、かなりのへだたりがありそうだ。うっかり安心して、やたらに恋文を書いていると、今に大河君に叱られるかもしれないよ。」
みんなは、それでまた笑った。しかし、その笑いは、まえほどにぎやかではなかった。
次郎も、大河の議論のはじまる前から浴室にいた一人だったが、かれは、大河が話している間、湯ぶねの中には一度もはいって来なかった。それどころか、しじゅう自分の顔を大河からかくすようにさえしていたのである。しかし、だれよりも熱心に耳をかたむけていたのが、かれであったことは言うまでもない。
かれは、むろん、大河の言葉のすべてを肯定した。しかし、肯定すればするほど、やり場のない感情がかれの胸をしめつけ、ゆすぶり、にえたぎらした。
それは後悔でもあり、自嘲でもあり、怒りでもあった。