Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
あとはみんなめいめいに塾生名簿に眼をとおしていたが、それも気まずさをそれでまぎらしているといったふうであった。
やがて式場に案内されて着席してからの荒田老の姿は、まさに一個の怪奇な木像であった。式の順序は一般の教育施設とたいして変わったこともなく、何度か起立したり着席したりしなければならなかったが、老は着席となると、必す両手をきちんと膝の上におき、首をまっすぐにたて、黒眼鏡の奥からある一点を凝視しているといった姿勢になった。そして壇上の声は、理事長、塾長、来賓と三たび変わり、たっぷり一時間を要したにもかかわらず、老は身じろぎ一つせず、黒眼鏡から反射する光に微動さえも見られなかったぐらいであった。
式がすむと、来賓も塾生といっしょに昼食をともにする段取りになっていた。しかし荒田老は式場を出るとそのまま塾長室にもはいらず、すぐ帰るといいだした。理事長が食事のことを言って引きとめようとすると、
「めし? わしはめしはたくさんです。」
と、そっけなく答え、付き添いの背広の男をうながし、さっさと自動車に乗ってしまった。
朝倉夫人は第一回以来のしきたりで、その日は入塾生のこまごました世話をやいたり、炊事のほうの手助けをしたりしていたため、開式になって、はじめて荒田老の怪奇な姿に接し、非常におどろいたらしかった。