Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
鈴田はすぐ荒田老の手をひいて歩き出したが、その眼は軽蔑するように朝倉先生の顔を見ていた。
「もうお帰りですか。どうも失礼いたしました。」
と、朝倉先生は、べつに引きとめもせす、二人を見おくって出た。朝倉夫人と次郎とは、眼を見あいながら、そのあとにつづいた。
荒田老は、それから、玄関口まで一言も口をきかなかったが、自動車に乗るまえに、だしぬけにうしろをふりかえって言った。
「塾長さん、あんたは毎日、新聞は見ておられるかな。」
「はあ、見ております。」
「時勢はどんどん変わっておりますぞ。」
「はあ。」
「自由主義では、日本はどうにもなりませんな。」
「はあ。」
「どうか、命令一下、いつでも死ねるような青年を育ててもらいたいものですな。」
「はあ。」
自動車が出ると、朝倉先生は夫人と次郎とをかえりみ、黙って微笑した。
次郎は、それ以来、荒田老の顔を見ていない。このまえの閉塾式には、案内を出したにもかかわらず、顔を見せなかったのである。田沼理事長に対して、老がその後どんなことをいい、どんな態度に出ているか、それは朝倉先生にはきっとわかっているはずだが、先生は、次郎にはもとより、夫人に対しても、そのことについて何も語ろうとはしない。