Japanische Klassiker mit Furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme
」
次郎は先生の横顔に眼をすえた。すると、先生はまた、じょうだんめかして、
「やはり、うなどんぐらいの壮行会には値するかね。はっはっはっ。」
それで夫人も笑いだした。しかし次郎は笑わなかった。先生はちらっと次郎の顔を見たあと、
「しかし、うなどんぐらいでごまかせる悲壮感でも、ないよりはまだましかもしれない。元来愛の実践は甘いものではないんだからね。愛が深ければ深いほど、そして愛の対象が大きければ大きいほど、その実践には、きびしい犠牲を覚悟しなけりゃならん。十字架がそれを証明しているんだ。だから、悲壮感は決して恥ではない。むしろ悲壮感のない生活が恥なんだ。」
「すると、平常心というのは、どういうことになるんです。」
次郎がなじるようにたずねた。
「悲壮感をのりこえた心の状態だろう。」
「のりこえたら、悲壮感はなくなるんじゃないですか。」
「そうかね。」
と、先生は微笑して、
「金持ちが金をのりこえる。必ずしも貧乏になることではないだろう。」
「ほんとうにのりこえたら、貧乏になるのがあたりまえじゃないですか。」
「じゃあ、知識の場合はどうだ。学者が知識をのりこえる。それは無知になることかね。