Japanische Klassiker mit Furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lesen Sie 沼夫人 (ぬまふじん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 78 Bildschirme
もう、手で払う元気が無いので、ぶるぶると振ると、これは! 男の天窓にあるべくもないが、カランと、櫛の落ちた音……
例のほたほた零れる水と、やがてまた縁が離れて、直ぐに新い音がはじまり、寝台の脚から掻巻の裾へかけて、こう、一つ持上げては、踏落す……それも、爪先で擦るでなしに、宙を伝う裙から出て、踵が摺れ摺れに床へ触るらしく、小股に歩行くほどの間を措いて、しと、しと、しと。
まさかこれぎりに殺されもしまい、と小松原は投に出て、身動きもしないでいれば、次第に寝台の周囲を廻って、ぐるりと一周りして枕許を通る、と思うと、ぐらぐらと頭を取って仰向けに引落される――はっとすると、もう横手へ退く。
その内に、窓下の点滴が、ますます床へ浸出すそうで、初手は、件の跫音とは、彼これ間を隔てたのが、いつの間にか、一所になって、一条濡れた路が繋ったらしくなると、歩行く方が、びしょびしょ陰気に、湿っぽくなって来た。
これでは目が覚めて見ると、血の足跡が、飛々に残っていようも知れぬ。
飛々どころか、何として、一面の血か、水であろう、と思われたのは、間も無くであった。
しとしという尋常らしい跫音が、今はびちゃびちゃと聞えて来た。