Japanische Klassiker mit Furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lesen Sie 沼夫人 (ぬまふじん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 78 Bildschirme
二十六
「ええ! 腑効ない。」
どっかり草へ。
蘆の葉末に水を載せて、昼の月の浮いて映るがごとく、沼のそこに、腕か、肩か、胸か、乳か、白々と漾い居る。
ソレソレ手に取るばかり、その人が、と思いながら、投出して見ても足がまだ水へは達かぬ。
何をか疑い、何をか猶予う。
余の事に、ここへ来るは今日には限らないと思切って、はじめて悚然として、帰ろうとして、骨を送った船の漾う処を視むれば、四五本打った、杭の根に留ったが、その杭から、友染の切を流した風情で、黄昏を翡翠が一羽。
二十六
それをこう視めた時、いつもとろとろと、眠りかけの、あの草の上、樹の下に、美い色の水を見る、描いたるごとき夢幻の境、前世か、後世か、ある処の一面の絵の景色が、彩色した影のごとくに浮んだので、ああ、このままここへ寝るかも知れない。
それも可、ままよ、なるようになれとなった。……
その内に、翡翠の背らしいのが、向うで、ぼっと大きくなり、従って輪郭は朧になったが、大きくなったのは近づくので、朧になるのは、山から沼の上を暮増るのである。その暮れるのと、来かかるのとが、蘆の汀を段々伝いに、そよそよと風に、背後を、吹かれ、送られ、近づいて、何の跫音も聞えなかったが、上からか下からか、小松原の目に、婦の色ある衣の裙が見えて、傍に来て、しっとり留る。