Japanische Klassiker mit Furigana
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ぬまふじん
沼夫人
泉 鏡花
Lesen Sie 沼夫人 (ぬまふじん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.541 Zeichen · 78 Bildschirme
(さあ、こうしておいでなさい。)
と畦を踏分けて跡をつけては、先へ立って、畠を切れて、夜は虫が鳴く土手を上ったが、ここらはまだ褄を取るほどの雫じゃなかった。
線路へ出て、ずっと見ると、一面の浜田がどことなく、ゆさゆさ動いて、稲穂の分れ伏した処は幾ヶ所ともなしに細流が蜘蛛手に走る。二三枚空が映って、田の白いのは被ったらしい。松があって雑樹が一叢、一里塚の跡かとも思われるのは、妙に低くなって、沈んで島のように見えた、そこいらも水が溢れていよう。
(もうこれだけかね、)
甚だ怪しからん次第だったけれども、稲の上を筏ででも漕いでくれたら、と思って、傍に居た親仁に聞くと、
(汐が上ったら、まっと溢るべい。)
と、腕組をして熟と視める。
成程、漁師町を繞ったり、別荘の松原を廻ったり、七八筋に分れて、また一ツになって海へ灌ぐが、そこ行くとこれでも幅が二十間ぐらい、山も賦になれば、船も歌える、この様子では汐が注そう。
と二人で見ているうち、夕日のなごりが、出崎の端から※と雲を射たが、親仁の額も赫となれば、線路も颯と赤く染まる。稲を潜って隠れた水も、一面に俤立って紫雲英が咲満ちたように明るむ、と心持、天の端を、ちらちら白帆も行きそうだった。